どう思う?部活ヘア

きっかけは調査で得た生徒たちの本音です。

部活生の 約10人に1人 は、
髪型を理由に入部を諦めたり退部する経験をしたり聞いたことがある。

さらに、約7割の部活生が、部活を行う中で
「髪の長さや髪型で自己表現をできること」が
「部活参加意欲アップやパフォーマンスアップに繋がると思う」

と回答。
※高校に通う部活生1000人への実態調査(2023年3月)

これを受け、マンダムでは、
部活も好きな髪型も思いきり楽しめるように、
自分らしい自分でいることの大切さについて
一緒に考えて、応援したいと考えています。

部活ヘアサロン

学生が自己表現と部活を両立して楽しめるよう、
髪型を整えてモチベーションアップを目指す共創チーム
「部活ヘアサロン」を結成。

全国の理美容師の皆様とサポートするサロンで
時には出張で、時にはサロンで、
たくさんの学生に髪から気持ちをあげていく!
届けています。

部活ヘアサロン実施紹介

飯塚高等学校
街なか学園祭

2023年11月25日に、福岡県飯塚市本町・東町商店街にて開催された、飯塚高等学校の「街なか学園祭」に部活ヘアサロンブースを出展。

野球や陸上、バスケなどさまざまな部活生が利用してくれ、スタイリング後は生徒たちは「最高です。やる前と今では気持ちが違います。前向きになりました」「モチベーションが上がります。とてもうれしいです」「これで、自信を持って人と接することができます」など、明るい声で答えてくれました。

雪谷高等学校
バスケットボール部

2023年12月14日、東京都立雪谷高等学校の女子バスケ部に、自己表現の選択肢を広げて高校生活と部活動の両立を目指す「部活ヘアサロン」のワークショップを実施しました。

“なりたい自分”や“勝負ヘア”を模索しながら「難しい…」と言う声もありましたが、スタイリストからアドバイスをもらいつつ、自分の手でやりたい髪型を実現できた生徒は笑顔になり、声色や表情までも変化していました。

報徳学園高等学校ラグビー部

2023年12月26日、翌日から全国大会開幕を控えた報徳高校ラグビー部選手に向けて、部活ヘアサロンを実施しました。

きっかけは、報徳高校ラグビー部のOBでありメリケンバーバーショップの理容師の方からの提案。自信を持った選手のプレーに繋がるとコーチも賛同下さいました。ヘアカットをした選手からは、「格好がついて、強くなった気分になる」「自信が付いて出来そうな感じがする」といった力強い声が上がっていました。

飯塚高等学校サッカー部

2023年12月29日全国高校サッカー選手権大会前に、飯塚高校サッカー部の選手たちのチアアップ及びパフォーマンスアップを目的として、部活ヘアサロンを実施しました。

大舞台を前に、リラックスした雰囲気の中にも静かな闘志がみなぎる選手たち。美容師で同校フィーリングコーチのヌマタさんも気合いが入ります。選手たちは「気合いが入った」「カットをきっかけにゴールを決めた先輩のように、自分も点を取りたい」と試合への意気込みを語ってくれました。

かえつ有明高等学校
マーチングバンド部

2024年1月11日かえつ有明中学校のマーチングバンドで部活ヘアサロンを開催。

大会本番で士気やモチベーションを上げるためのメイクやヘアスタイルの考案をサポートしました。衣装や振り付けとの相性に加えてどんな風に自分を表現するのかポジティブな気持ちで考えて取り組むことができていました。ヘアサロン後の練習で個性が輝きイキイキとした生徒たちも印象的でした。

駿台学園高等学校
バレーボール部

2024年1月23日駿台学園高校バレー部で部活ヘアサロンを実施しました。

練習中の姿から一変、カットとヘアスタイリングしてもらっている生徒たちは緊張の面持ちでしたが、スタイリング終了後鏡を見てメンバー同士で褒めあったり、「ツーブロックしてみたかった」「格好よくしてもらえてすごく嬉しい」と話しており、自信にあふれた姿で練習コートに戻っていく生徒たちでした。

輝友杯
MIYOSHI DIVISION 2023

2023年8月30・31日、愛知県みよし市の旭グラウンドにて、「輝友杯 MIYOSHI DIVISION 2023 supported by 西尾レントオール」が開催され、マンダムブースを出展し、ヘアスタイリストとともに選手名鑑撮影前の選手たちのヘアスタイリングをサポート。

初めてのヘアスタイリングに緊張も、いつもと違う自分で気分も一新している選手たちでした。

協力者・賛同者

ヌマタユウト

ヌマタユウト

YUTO NUMATA

美容師(MERICAN BARBERSHOP®︎所属)
飯塚高等学校 サッカー部フィーリングコーチ

MERICAN BARBERSHOP®︎ CREATIVE DIRECTOR・2020年、飯塚高等学校 サッカー部FEELING COACH就任。男とか女とかの性差とか、理容とか美容とかそれ以外でもどの業界だとか、そんなことは関係なしにHAIRCUTの可能性を広げていきたい。

COMMENT

飯塚高等学校 サッカー部との、HAIRCUTを通した“LOOK GOOD FEEL GOOD PLAY GOOD”の活動は約3年前からスタート。はじめは少しずつだったみんなの共感が、今は大きいウェーブになってきた気がする。海外で、ビッククラブで、ゲーム前に髪を整えることってあたりまえ。見た目がよくなると、気分がアガって、プレイもよくなる。それが観客を魅了する。プレイヤーの自己肯定感も高まる。まわりにサポートされてることも知る。10年後、20年後、これを体験した彼らは、きっとそれを何かのカタチで返そうとする。そんな未来がやってきたら最高です。

花田真寿美

花田真寿美

MASUMI HANADA

Precious one.代表
アスリートビューティーアドバイザー®

現役アスリートを中心に、引退後のアスリートや学生アスリート、スポーツを楽しむ多くの方に向けて、粧い(よそおい)と内面の両方を磨く「美」をテーマに、女性が自信をもって目標を達成するためのプログラムをプロデュース。これまでに27競技のアスリートたちへメイクレッスンやサポートを実施。

COMMENT

高校時代、部活に打ち込んでいた時に経験した、部の伝統である角刈りにより自信が持てなかった過去を思い起こし、アスリートビューティーアドバイザーという活動を始めました。今回マンダムの「部活ヘアサロン」は、「ビューティー」で前向きな力をつくる自分の想いと同じ想いを持った取り組みだと感じております。世の中の学生が自分らしさを表現し、更に輝けるようにサポートしたいと思います。

内田良教授

内田良教授

RYO UCHIDA

名古屋大学大学院 教育発達科学研究科

INTERVIEW

名古屋大学大学院 教育発達科学研究科の内田良教授は、頭髪規制は学校と生徒の関係性を捉える上で最も根深い問題であると語ります。理想的な部活の在り方やルールの見直し方、そして私たちが改めて問い直すべき意識とはどのようなものなのでしょうか。校則や部活動の問題の研究を行い、多数メディアを通じて発信されている内田教授に見識を伺いました。

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学生のおしゃれや自己表現は、学校では「わがまま」と言い換えられる

―内田教授が研究されている校則の問題について、
着目したきっかけは何だったのでしょうか?

「私は、子どもの事故や家庭での虐待を起点にリスク研究をはじめて、学校関連では主に部活での事故について調べていました。そこからの延長で、部活は教員の長時間労働などさまざまな問題を内包しているということが分かり、幅広く調べています。校則の問題に着目したきっかけは、2017年に発生した、女子生徒が高校を提訴した頭髪指導の裁判です。

最高裁まで行って棄却されましたが、今日の校則をめぐる議論のきっかけになった重要な事案となりました。校則で子どもを縛っている学校は未だに多いですが、研究を進める中で、必ずしも教員側もそれを望んでいる訳ではないということ、学校という組織は一枚岩のように見えても、分解していくと校則に違和感をもっている教員も少なくないことが分かってきました。
でも表向きには『校則は厳しくあったほうがいい』という風になっている。大人数で行動をする上で自ずと生まれてきた“ルールで縛る”ということが、『子どもたちを統率し、まとめ上げている』という風に評価されてきたので、なかなかそこに切り込めないのが実情だったと思います。しかし、そもそもその統率されている状態を上手くいっていると表現するかどうか……そこが集団行動を重視してきた学校の特性でもあり限界でもあります。ただ、学校には保守的な人だけでなく、革新的な人もちゃんといるので、そんな人たちが声を上げやすくするのが、私たち研究者やメディアの役目だと考えています。世論が盛り上がれば、学校内でも議論しやすくなりますから。」

―校則に関しては徐々に議論が進みつつあるという印象ですが、部活に関してはルールが明文化されていないこともあり、変化の動きに乏しいように思います。内田教授は部活のブラックルールについて、どのような課題があるとお考えでしょうか?

「本来、ルールというのは明文化されているべきであって、それ以外のものは強制すべきではないんです。部活動でのルールは特に明文化されていないものが多いですよね。丸刈り頭が代々受け継がれていることで、生徒もそれを続けないといけないと思い込んでいるところもありますし。だからこそ、マンダムさんが部活ヘアの問題に着目したのはすごくいいなと思ったんです。ルールが明文化されていないので、生徒が空気を読んで従う。そうすると、教員側は『これは生徒が自主的にやっているんです』と言えてしまう。生徒の髪を教員が刈れば問題ですが、例えば『そんな髪型でやる気あるのか!』と、怒鳴ったことによって生徒が丸刈り頭にしてきたら、生徒による選択だと裁判では判断されてしまいます。だからこそ教員側は、生徒が自主的にやっているように見えていたとしても、同調圧力で従っているだけかもしれないという視点をもたないといけません。生徒はレギュラーで試合に出たいし、部活の実績で進学したいこともあります。そういった場合、顧問の先生は生徒の人生を握っているようなもので、影響力は絶大です。明文化されることなく顧問個人の価値観がルールとして強制されていく。生徒は逆らいにくいということに、権力者はもっと敏感でなくてはいけないんです。」

―学校や部活の中でも、『髪型』については特に厳しいルールが設けられている印象があります。それは何故でしょうか?

「確かに、学校は髪型への規制を最後まで手放さないですね。というのは、恐らく髪型というのは可変的で、印象を左右するものだからではないでしょうか。『生徒が髪をカラフルに染めるのは非行の始まりだ。それをみんながやりはじめると風紀や秩序が乱れる懸念がある』といった理論で、抑え込んでいるのが頭髪規定ですね。学校における『おしゃれ』という言葉は、『わがまま』と言い換えられがちです。生徒の自己表現とは捉えない。おしゃれって普通はいい言葉なんですが、生徒たちの統制が取れないという理由で学校では好まれない言葉になってしまう。私たちが個性や多様性と言っている言葉も、学校用語で置き換えるとすべて『わがまま』になってしまいます。だから教員が“生徒の個性”について話していても、そこでいう“個性“というのは、実際ものすごく狭いところを指していますよね。私が思うに、個性とは、誰かを傷つけない限り認められて当然のものなんです。世の中、言葉では『個性や創造力が大事だ』ってよくいうんですけど、『皆さん、そう言ってる割に縛っていませんか?』と問いかけたいです。学校以外のさまざまな組織や場面においても、私たちは個性や多様性というものを非常に狭く捉えてしまっていると思います。」

生徒の自己表現を制限する部活ルールが与える影響

―マンダムが実施した調査では『OBの7割が、当時の部活ルールに不満を持っている』というデータが出ました。一方で、理不尽に感じていない生徒の3分の1が『考えたことがない』と回答しています。このデータをどう捉えるべきでしょうか?

「マンダムさんの調査データでは、違和感を持っている人の数値がしっかり出ていますね。これは、みんなが従っているように見えても実際は納得できていないということ。しかし現状、当たり前になっているから同調圧力を感じて言い出せない。でも違和感を持っている人がここまでいるなら、もっと議論が進まないとおかしいですよね。

一方で、違和感なく適応している生徒も一定数存在します。ルールの種類にもよりますが、頭髪規定に対して違和感を持っていない生徒もいますし、茶髪をOKとしたら何より生徒会が反対するような学校も出てくるんじゃないでしょうか。今の生徒の考え方も固いところがあります。でもそれは、既存の校則や部活ルールが生徒や保護者、OBにとって当たり前のものになってしまっているから。いちど自由化して過ごしてみて、元の校則に戻す方法を採れば、違和感に気付く人はもっと増えると思いますが、いかんせん当たり前になっているのが難しいところですね。現行の校則を維持したままでアンケートをとれば、「今のままでいい」と答える生徒も少なくないでしょう。そもそも自由になったことがないから、不自然さに気付かないんです。だから、ぜひ生徒にアンケートをとろうと考えている学校では、試行期間を設けて、そのビフォーとアフターで生徒の変化を感じ取ってほしいです。」

―髪のルールなどで自己表現を制限することで、生徒たちにはどのような影響が及ぶと考えられますか?

「厳しいルールで縛り、言われたことに従うだけの人間にするのか、自ら選択してより適切なものを選ぶ力を持った人間に育てるのか、ということだと思います。そういう意味でも校則や部活ルールは、できるだけ選択できるようにしておきたいですね。そもそも『髪の自由やおしゃれな服装で誰かの人権を侵害しているのか?』という問いは、ルールを作る大人は常に考えないといけません。実際、誰も傷つけてないんですよね。じゃあ誰が傷ついているかというと、そこで理不尽に叱られた生徒が傷ついているんです。おしゃれや自己表現という以前に、人権や子どもの心について考えないといけない問題です。誰かを傷つけていないなら、何が問題なのか。生徒たちが自分で考えて選んで、何かを作り出せる環境をつくっていくのが教育の役目だと思います。」

部活ルールの改善は、教員から一歩踏み出すことが重要で、生徒任せにしない

―理想の部活動の在り方やルールはどのようにつくっていけば良いのでしょうか?

「もし現状、学校や部活で理不尽なルールを強いている場合、そうした校則やルールの廃止は、それを定めた先生や学校側がやるべきで、それを強制されている生徒に任せてはいけません。既存のルール廃止と刷新するフェーズは分けて考えるべきです。生徒は理不尽なルールがなくなった段階から新たにルールを作るときに初めて入って、そこから主体的に変えていく方法が良いと思います。なぜなら、これは学校や教員側が変わらないといけない問題だから。生徒側からの働きかけで変わったという物語は美談になりがちですが、やはり既存のルールを作った側がゼロベースにしてから生徒にバトンタッチしないといけない。そう伝えると、『それだとまたトップダウンになりませんか?』とよく聞かれるんですが、トップダウンで実行すべきケースとそうすべきではないケースがあって、校則においてはまずは教員側から変わるべきなんです。それに、現時点で不自由なのに、そのルール廃止を生徒に任せても、変わりたくない・変われない教員がいる限り、生徒たちの力で大幅に変えることはかなり難しいです。生徒が校則を変えるために時間をかけて取り組んでも、結局、許可される靴下の色が1色増えましたというレベルの話に縮小されてしまう。」

―「どう思う?部活ヘア」の取り組みの中で、いくつか取材させていただき、丸刈りルールを自由化した部は、まず顧問の先生の方から部員たちにルール廃止の話をしている傾向にあると感じていたのですが、そこが重要なポイントということですね。

「その通りです! 一歩踏み出すのは顧問の教員であることが重要です。そこから部員たちに考えてもらって、意見を出し合って変わっていくのがいいですね。やはり、子どもの気付きや自主性をつぶすのも生かすのも大人なんですよね。でも、そこで大人が自分の立場を免責化してしまうと進まない。大人の方こそ、この問題を主体的に考えないといけないんです。
今の校則やルールは、教員が生徒に疑いをもっているともいえます。自由にすると、学業や部活に集中できなくなると疑っている訳です。でももう、そんな人間関係やめませんか。結局、自由にするには信頼するしかないんです。『自由にしていいよ』と手放したときに、生徒も教員側を信頼できると思いますし、『自由化した後、もし何かトラブルに巻き込まれたときには相談にきてね』というのが教員の役目だと思うんですよ。でも今は、トラブルを未然に防ぐためにすべて掌の上に乗せてしまっていて、それでは生徒の主体性は育たないと思いますね。」

―こうしたルールを変えたいと悩んでいる教員もいると思うんですが、組織としてうまく変えていくにはどうすれば良いのでしょうか?

「自分は違和感を持っているけど、周りは違和感を持っていないから変われないんだと考えている人もいると思いますが、マンダムさんの調査をみても私が研究で取っているデータにしても、どんなトピックでも違和感を持っている人は必ず何割かいるんですよね。でも、表向きは旧来の学校文化に賛同しているように見えているだけなので、まずは少しでも周りと話してみるといいと思います。そこで作戦を立てて、職員会議で声を上げてみれば、他の人も意外と同じことを考えているというのが見えてくるはずなので。一人で悩むより、同じように悩んでいる人は必ず周りにいるよというのはお伝えしたいですね。どんなことも一人では変えられないですけど、表に出してないだけで同志はいますから。
あと、校則や部活ルールについて教員が改めて考えるときに、人からルールを押し付けられることの息苦しさを自分の立場で考えることがまず必要なんだろうなと思います。ちなみに、社会人として最も服装が多様な職場は学校ですよ。スーツもジャージも、スニーカーもサンダルの人もいて、最も自由なんです。一方で最も不自由なのが生徒という、不思議な当たり前が混在しているのが学校です。ここで、不必要に生徒を縛っていないか考えてみていただきたいですね。」

―丸刈りルールが伝統になっている場合、顧問がOBや保護者の反応を気にすることもあると思うのですが、理不尽な部活ルールを社会として改めて考えていくために、私たちにできることは何でしょうか?

「部活は保護者や社会との関わりが強い領域です。授業については外から口出しできない一方で、運動部の大会であれ、文化部のコンテストであれ、外から見るものでもあって、社会との接点も多い。その様な部活において明文化されないルールが多くある中で、そこをできるだけ根本から変えていくために社会も学校も一歩を踏み出す必要があります。それは健全化するためのトップダウンであって、生徒を拘束したりつぶしたりするようなものではありません。だから私たち社会にできることは、子どもたちの権利について自分ごと化して考えて、生徒の多様性や自主性を大切にするということですね。」

河野仁志監督

河野仁志監督

HITOSHI KONO

青森山田高校 陸上部

INTERVIEW

全国高校駅伝大会において、7年連続28回目の出場を誇るスポーツの名門・青森山田高校の陸上部には、“部員は丸刈りで走る”という長年受け継がれてきたルールがありました。そんな象徴的なルールを撤廃し、髪型の自由化を推進した河野監督に、そこに至るまでの経緯や部員たちの変化について伺いました。

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丸刈りの伝統によってオファーを断られる現実。卒業生の意見がルール変更への後押しに

―まず、青森山田高校陸上部が髪型の自由を認めた
経緯についてお聞きしました。

「当校の陸上部にとって、“丸刈り”は代々受け継がれてきた伝統でした。特に前任の監督は、『3年間、丸刈りで走りきる覚悟がなければ強くなれない』という考え方から、髪型へのルールに強いこだわりを持っていたようです。私がそんな伝統を変えようと考え始めたきっかけは、有力選手をスカウトする際に丸刈りを理由に断られるケースが増えてきたから。

現在、青森県下の中学校には丸刈りを強いる陸上部はないため、当校の陸上部に入るにあたって丸刈りにさせられることに抵抗感があるのだと思います。実際、青森県の選手をスカウトに行くと、6人中3人に『丸刈りだから入りたくない』と言われました。結局、その年は青森県の学生を1人も獲得できず、北海道や秋田など県外出身の学生で構成せざるを得ませんでした。私が監督に就任して間もない頃は、他校にもまだ丸刈りの伝統がある陸上部はいくつかあったのですが、近隣の駅伝出場校が丸刈りを辞め、髪を伸ばすようになってきたんです。気付けば、丸刈りを貫いているのは当部だけでした。以前なら『丸刈りになっても、青森山田で走りたい』と、入部してくる生徒が多かったのですが、そんな声が少なくなってきたことに危機感を抱き始めたんです。
丸刈りのルールを変えるにあたり、学校への決裁などは必要なく、監督の一存で決められます。しかし、ここまで続いてきた伝統なので、卒業生の意見も聴きたいと思い、約10名に電話しました。肯定的な反応がある一方で、『今時の学生って感じですね』『3年ぐらい我慢しないと』といった声もありました。それでも最後には 『部員が集まらないことによって駅伝で負けるよりはいいんじゃないですか』という意見が後押しになり、決心がつきました。」

―校則に関しては徐々に議論が進みつつあるという印象ですが、部活に関してはルールが明文化されていないこともあり、変化の動きに乏しいように思います。内田教授は部活のブラックルールについて、どのような課題があるとお考えでしょうか?

「本来、ルールというのは明文化されているべきであって、それ以外のものは強制すべきではないんです。部活動でのルールは特に明文化されていないものが多いですよね。丸刈り頭が代々受け継がれていることで、生徒もそれを続けないといけないと思い込んでいるところもありますし。だからこそ、マンダムさんが部活ヘアの問題に着目したのはすごくいいなと思ったんです。ルールが明文化されていないので、生徒が空気を読んで従う。そうすると、教員側は『これは生徒が自主的にやっているんです』と言えてしまう。生徒の髪を教員が刈れば問題ですが、例えば『そんな髪型でやる気あるのか!』と、怒鳴ったことによって生徒が丸刈り頭にしてきたら、生徒による選択だと裁判では判断されてしまいます。だからこそ教員側は、生徒が自主的にやっているように見えていたとしても、同調圧力で従っているだけかもしれないという視点をもたないといけません。生徒はレギュラーで試合に出たいし、部活の実績で進学したいこともあります。そういった場合、顧問の先生は生徒の人生を握っているようなもので、影響力は絶大です。明文化されることなく顧問個人の価値観がルールとして強制されていく。生徒は逆らいにくいということに、権力者はもっと敏感でなくてはいけないんです。」

“自由な髪型”にも基準は必要。
ルール変更後は、細かなニュアンスの擦り合わせが鍵に

―丸刈りからのルール変更を現役部員たちにはどのように伝え、どんな反応があったのでしょうか。

「部員たちには、駅伝の県予選で優勝したタイミングで伝えました。大会前に伝えて、もし緊張感が薄れてしまったら……という懸念があったので、全国大会への切符を掴んだ日が最良だと考えたんです。部員たちはとても驚いていましたが、嬉しそうでしたね。そこから数か月後の全国高校駅伝大会には、丸刈りではなく少し伸ばした状態の髪で出場できました。しかし難しかったのは、自由な髪型に関する細かいニュアンスを生徒と擦り合わせること。
これまでの反動か、ルールを履き違えて過度なオシャレに走ってしまう生徒が出てきたんです。ルール変更時、“あくまでもスポーツマンらしい髪型で”と忠告していたので、許容範囲に収める生徒が大半でしたが、少し奇抜な髪型にしてきた生徒がいたので、『丸刈りじゃなくていいけど、あまりにも高校生ぽくない髪型はやめよう』と、改めて説明しました。自由な髪型の境界線は難しいですが、私は髪型というよりも、爽やかさや清潔感の有無が基準になってくると思います。結果がすべてのプロの世界とは違い、アスリートである前に高校生であることは忘れないでほしいと思うんです。」

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