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ミドル脂臭とは?
マンダム独自の男性の体臭研究で、汗臭、加齢臭とは異なる30~40歳代の男性に特有の「第3のニオイ」を新たに発見。
これを「ミドル脂臭」と名付けました。
ミドル脂臭は汗に含まれる「ジアセチル」が原因成分であり、主に後頭部や頭頂部を中心に発生する、使い古した油のようなニオイです。
男性は自覚しにくい一方、女性は気付きやすく、しかも不快に感じるという特徴があります。
日常の“何気ないシーン”から
新たなニオイの研究が始まった。
マンダムの研究員のひとりが、サークル活動としてフットサルをしていた時のことです。
体育館や更衣室で60歳代の男性たちと一緒になると、加齢臭の原因成分である「2-ノネナール」特有のニオイを感じていました。
しかし、30〜40歳代の男性たちと一緒になった場合は、2-ノネナールのニオイはほとんど感じないものの、それとは別の独特なニオイを感じとったのです。
つまり、2-ノネナールとは違うニオイの原因成分が存在するのではないかーー。
日常生活のあるシーンからそのような仮説に至り、「30〜40歳代特有のニオイの成分」を探索する研究がスタートしました。
男性は30~40歳頃から
体臭に変化が生じる
「加齢による体臭の変化」
を感じ始める男性の年齢
生活者の半数は「30~40歳代」で、
男性の体臭の加齢変化に気づく。
調査概要
- 調査対象者
- 10~60歳代の日本人男女1,200名
- 調査時期
- 2008年7月
- 調査方法
- インターネットによるアンケート調査
加齢臭は一般に、50歳代以上から本格的に発生することがこれまでの研究で知られています。
しかし、生活者が加齢によるニオイの変化を実感するのは、30〜40歳代に多いことがわかりました。
40歳代は全年代を通じて最もニオイの変化を感じており、30歳代と合わせると全体の約半数に上ります。
生活者自身にも、加齢臭の発生年代と、ニオイの変化を実感する年代にギャップがあったのです。
ミドル脂臭はどのように
発見されたのか?
ニオイの発生部位を特定
被験者は7年間で約800人!
研究員が直接、鼻で嗅いで測定
マンダムの研究員たちは、まず、被験者である40~50歳代男性のワキや頭、足、体幹部分など、体のさまざまな部位のニオイを直接、鼻で嗅いで測定。
その結果、40~50歳代の男性は頭部のニオイが最も強く、一方で加齢臭の発生源といわれていた「耳の裏」のニオイは弱いことが明らかになりました。(図1)
発生源は頭だと判明
枕のニオイも調べてみると…
さらに、頭部からのニオイが強いため、枕のニオイも評価することにしました。
枕にニオイを採取するためのカバーを装着し、被験者に一定期間、実際に睡眠してもらったのです。
そのうえで、頭部のニオイの特性・質について40〜50歳代の男性と20歳代男性で比較したところ、40〜50歳代男性の頭部および枕から発生するニオイは、20歳代男性に比べて強い「脂(アブラ)のようなニオイ」であることが確認されました。(図2)
“脂”のようなニオイが…
“ミドル脂臭”という名は、
この独特の“脂のようなニオイ”から来ている
ニオイの正体を突き止める
頭部のニオイのサンプルを収集
次に、ニオイの正体を突き止めるため、ニオイを採取して分析。
被験者の頭部にサンプリングバッグをかぶせ、発生するニオイを袋内に閉じ込めます。
サンプリングバッグは、ニオイの付着しにくい特殊な素材でできており、専用のボンベを使ってそのニオイを採取します。
ニオイ測定機器「GC-MS-O」で体臭を分離
大量のサンプルを採集した後は、ニオイ成分の測定・分析を行います。
実は、ひとくちに「ニオイ」といっても、さまざまな成分から構成されているため、特に体臭に影響を与えるニオイ成分を特定する必要があります。
そこで用いるのが、体臭を分離し、それぞれ個別のニオイを確認できるニオイ測定機器「GC-MS-O」です。
この機器を使ってニオイ成分を一つずつ分離した後、それぞれのニオイ成分を分析するとともにニオイの吐出口から出てくるニオイを人間の鼻で嗅ぎ、チェックします。
そして、得られたニオイ成分の構造情報と、人間の鼻でチェックしたニオイの強度情報を照らし合わせ、ニオイ成分を特定します。
こうした研究を経て、ミドル脂臭の原因成分を解明しました。
ミドル脂臭の原因成分は
「ジアセチル」
ミドル脂臭の原因成分の正体。
それは、「ジアセチル」であることがわかりました。
この成分の、頭部における発生量と年齢との関係を調査した結果、40歳を中心にジアセチルの発生量が多く、20~40歳の間では年齢とともに増加する傾向にあることが明らかになったのです。(図3)
この傾向は、生活者が体臭の変化を認識する年代と一致し、頭部で増加するジアセチルが、ミドル男性特有の体臭の原因成分であることを裏付ける結果となりました。
「ジアセチル」を抑制する技術開発が
スタート
「ジアセチル」の発生メカニズムを解明
ジアセチルはどのように発生する?
ジアセチルの発生を効果的に抑制する技術を開発するため、まずは皮膚上におけるジアセチルの発生原因となる汗中の成分と、皮膚常在細菌を特定しました(図5,6)。
その後、汗中の成分と皮膚常在細菌を混合培養し、ジアセチルが発生するメカニズムを解析した結果、皮膚上の主要細菌である「表皮ブドウ球菌」、「黄色ブドウ球菌」が汗中の「乳酸」を取り込んで代謝し、ピルビン酸、アセトインに変化する過程を経て、最終的に悪臭を放つジアセチルがつくり出されることが明らかとなったのです。(図7)
フラボノイド含有植物エキスに
抑制効果
102種類の植物エキスを徹底調査
次に、ジアセチルを効果的に抑制する素材を探索。
102種類の植物エキスのジアセチル抑制効果を評価しました。
その結果、カンゾウやケイヒなど、フラボノイドを含有する数種の植物エキスが、皮膚常在細菌によるジアセチルの発生を効果的に抑制することを発見しました。
さらに、これらの植物エキスがジアセチルの発生する過程においてどのように作用しているかを確認したところ、乳酸からピルビン酸へ代謝されるスピードを遅らせ、菌体内への乳酸の取り込みも抑制させることを見出しました。(図9-1,9-2)
この結果から、これらのフラボノイド含有植物エキスがジアセチルの発生を抑制する効果は、乳酸からピルビン酸への代謝抑制によるものであることが明らかになりました。
「ミドル脂臭」対策の探求は続く
今回の研究成果により、今まで解明されていなかったミドル男性に特有の体臭の実態が明らかになりました。
これまで知られていた、ワキのニオイを中心とする汗臭(ワキ臭)、主に50歳代以降に顕著になる加齢臭のほかに、「ミドル脂臭」という「第3のニオイ」の存在が明らかになったことで、生活者の年代や部位による体臭の変化を正確に理解するとともに、適切かつ効果的な体臭ケアが可能となりました。
今後もマンダムは、主要な研究テーマの一つとして、この「ミドル脂臭」の研究に力を入れていきます。
頭部の官能評価
- 試験時期
- 2009年7月~8月
- 被験者
- 健康な日本人男性26名
(20歳代:16名/40~50歳代:10名) - 評価項目
- 臭気強度(6段階)、および、
臭気タイプ(8タイプ) - 評価者
- マンダム研究員(臭気判定士を含む)4名
- 評価部位
-
- 頭部4部位(洗浄24時間後)
- 枕カバー(1週間使用後)