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2021年ノーベル医学・生理学賞受賞研究
「温度・触覚の受容体」のひとつ
五感とは違う感覚センサー
2021年ノーベル医学・生理学賞受賞研究「温度・触覚の受容体」
のひとつであるTRP(トリップ)チャネル。
TRPチャネルは五感とは別の、
温度 や 化学刺激 を
感じ取る細胞の感覚センサーです。
マンダムではそのTRPチャネルに着目し、
人間の感覚を大事にした研究開発を行っています。
TRPチャネルについて、
自然科学研究機構・生命創成探究センター
富永 真琴 教授
とマンダムで
共同研究を行っています。
〈プロフィール〉
自然科学研究機構・生命創成探究センター 富永真琴教授 / 愛媛大学医学部卒、京都大学大学院医学研究博士課程修了, 博士(医学)。京都大学、生理学研究所、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、筑波大学、三重大学を経て、現職。
2021年ノーベル賞受賞が決定したTRP(トリップ)チャネル研究の権威であるカリフォルニア大学教授の David Julius(デイヴィッド・ジュリアス)氏のチームに、TRPV1チャネルが発見された1997年当時に日本から唯一参画。TRP(トリップ)チャネル研究の第一人者である。温度受容・侵害刺激受容の分子機構解明を目指してTRP(トリップ)チャネルの研究を行っている。
TRPチャネルにはいくつも種類があり、人間のほとんどの細胞にいずれかのTRPチャネルが存在しています。
また、温度だけではなくメントールやカプサイシンなど化学刺激を感知して反応することなど、
正体は少しずつ明らかになりつつあります。
私たち人間は、外からの刺激を感知・判断する様々なセンサーを持ち合わせています。センサーがあるおかげで、周囲の環境変化を感じ取って対応し、生命を維持していくことができるのです。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感は、広く知られているセンサーです。五感は古代ギリシャの哲学者・アリストテレスの提唱から始まっており、紀元前から認識されています。それから長い時を経た1997年、「TRP(トリップ)チャネル」が温度を感じるセンサーであることがわかりました。
TRPチャネルを活性化する温度刺激と化学刺激
温度センサーとして働くTRPチャネルは、一つ一つが異なる温度帯を感知しているだけではなく、それぞれに化学刺激を感じ取って反応しています。また、多くのTRPチャネルが、植物由来の物質で活性化される性質を持っています。
例えばTRPV1は、人間にとって危険になり得る約43℃以上の温度で活性化されますが、その他にもトウガラシの辛みの主成分でも活性化されます。トウガラシを食べると、口の中にヒリヒリするような感覚が生じますが、辛みは味覚とは違って、痛みに似た感覚です。「辛い」と「熱い」 どちらも英語で「Hot」と表現しますが、人間の本能が言わせた言葉なのでしょう。
TRPチャネルには
いくつもの種類があります
生活の中で感じる
はこんなにも!
TRPV1
- トウガラシを食べて、口がカッカする
(カプサイシン) - キムチ鍋のキムチは
より辛く感じる
(カプサイシン) - 冷たいジンジャエールを飲むと、
じんわり温かさが残る
(ショウガ) - 生姜湯を飲むと、口の中の温かさが持続する
(ショウガ) - お酒を飲むと、
喉が焼けるように感じる
(アルコール)
TRPM8
- メントールタブレットを食べて、
水を飲むと、常温でも冷たく感じる
(メントール) - ミントアイスは他のアイスより冷たく感じる
(メントール) - ハッカ油風呂から出ると、
汗がひきやすい
(メントール) - ミントティーは温かいのに、
口の中がひんやりする
(メントール) - メントール入りジェルは
日焼け肌に気持ちいい
(メントール)
TRPA1
- 消炎鎮痛剤(シップ)を貼るとヒリヒリする
(サリチル酸メチル) - 目や鼻に水が入るとしみて痛い
(低浸透圧液) - 咳止め薬を胸に塗ると、咳が収まる
(ユーカリプトール) - ワサビを食べると鼻がツーンとする
(ワサビ成分) - ヘアカラーの液により(炎症はないが)
頭皮がピリピリする
(アルカリ)
温度や化学刺激を検知することは
生命維持には欠かせない!
それぞれに適した生活環境を得るために昆虫~ヒトに至るまで、
ほぼすべての生物にセンサーは備わっています。
マンダムでは、そんな細胞の感覚センサーである
TRPチャネルの研究を重ねて快適に使用できる製品の開発に
つなげています。
- CASE 01
不快刺激の低減 - CASE 02
清涼感の追求 - CASE 03
スキンケア
化粧品でまれに刺激を感じることも…
ヒリついたりチクチクしたり
感覚刺激は人それぞれ…
-
ヘアカラー
-
防腐剤
(パラベン) -
保湿剤
(多価アルコール) -
クレンジング
炎症が起こっていなくても不快に感じる場合があるのは
化粧品に使われている成分がTRPチャネルを刺激しているから。
そういった感覚刺激にTRPV1やTRPA1が関与していることを見出しました。
化粧品の成分以外でも…
鼻に水が入ったときも痛みを感じませんか?
これもTRPチャネルが反応しているからです。
体液や細胞液よりも浸透圧の低い水が体内に入ることで
TRPA1が活性化して痛みを生み出しています。
そこで、刺激の度合いを
と の
反応ではかる
評価方法を開発しました。
事例1
ヘアカラー時に感じる頭皮の不快感…
アルカリによる化学刺激で
TRPA1が反応し「ピリピリ」「ヒリヒリ」といった
不快な感覚刺激を感じることがあるが、
炭酸イオンによって感覚刺激が低減されることを発見
不快な感覚刺激を低減させたヘアカラーの実現
事例2
クレンジングが目に入るとしみる…
眼や鼻に水などの体液や細胞液より低い浸透圧の液体が入ることでTRPA1が反応し痛みを感じている事を解明
浸透圧調整でTRPA1の活性を抑制した!
低浸透圧による不快刺激を低減させた
クレンジングの実現
TRPチャネルの反応を
活用することで、
より快適に使用できる製品の開発が可能に!
化粧品でも
スーッと爽快な
感覚が欲しい
暑いとき手軽に
清涼感を
感じたい
スキンケアやヘアケア、ボディケアなど
様々なカテゴリーで
清涼感を感じる化粧品のニーズがある
清涼感といえばメントール。
メントールがTRPM8を刺激して
ひんやりとした冷たさを感じているが、
更なる清涼感を求めて
メントールの量を増やすと
TRPA1まで刺激し痛みなどの不快刺激を
感じてしまう。
そこで、
冷たさと不快刺激の度合いを
と の
反応ではかる
評価方法を開発しました。
ユーカリプトール、イソボルニルオキシエタノールが、
TRPA1の活性を抑制し、不快刺激を低減することを明らかに
イソボルニルオキシエタノールによる制御効果
TRPチャネルの反応を
活用することで、
より快適な清涼感を実現する、
製品の可能性が広がりました!
乾燥、毛穴の目立ち、ハリの低下…など
女性の肌トラブルの
多くは炎症反応と
関わりがあります。
このような炎症の一部には表皮角化細胞の免疫が関わっている。
そこで、その細胞内に存在するTRPM4に着目。
TRPM4を活性化するとどうなるのか…
研究の結果 が
表皮角化細胞の免疫反応を
コントロールできることを
日本で初めて確認!
による、肌細胞の
免疫反応のコントロール作用
さらに、
TRPM4の活性化を評価する方法を
開発しました。
それを用いて、TRPM4を
活性化する成分を探索
ミネラルの一種
「アルムK(ミョウバン)」がTRPM4を活性化
することを確認
また、アルムKを用いることで、
表皮角化細胞の炎症シグナルが抑制されることも確認
実際に「アルムK配合ローション」を用いた
連用実験結果は…
連用実験結果
水分量・ハリ・毛穴の
全ての指標において肌状態が改善!
TRPチャネルの反応を
活用することで、
新しいアプローチによる
スキンケアの開発が可能に!
- CASE 01
不快刺激の低減 - CASE 02
清涼感の追求 - CASE 03
スキンケア